音と紅茶の時間

音楽と恋の話、想い出話、今の心模様に、紅茶を添えて。

無水鍋のスポンジケーキ

~たべものエッセイ~

*****

私が小さい頃、母は、いつも無水鍋でケーキを焼いてくれた。

はかりにチラシをのせて、砂糖と小麦粉を量る。
ざるでふるうのは、子供の私の仕事。

18㎝のケーキ型には、マーガリンを塗って、小麦粉を薄くまぶして
とん、とん、と、はたく。

卵白と卵黄を分けるのは母。
別立てで泡立て。

ボールに半量の砂糖と、卵白を入れて、ハンドミキサーで
つのが立つまで泡立てるのは私。

その間に、母は、卵黄に砂糖を入れて、白っぽくなるまで泡だて器ですり混ぜる。

そのあと、卵黄と卵白をゴムべらで混ぜて。
さらにベーキングパウダーを加えた小麦粉を切るように混ぜて、すぐに型に流す。

とん、と一回、型をテーブルに打ちつけて、少し空気を抜く。
大きな無水鍋に入れて、ふたをして、コンロの弱火でじっくり焼く。

ふんわりと、甘い、いい匂いがしてくる。

竹串をさして、柔らかい生地がつかなくなったら、できあがり。

焼きあがったケーキは、上がクリーム色でふっくらと盛り上がり、
側面と底がきつね色。
くるっと型の周りに包丁を入れ、底を抜く。

ケーキは冷ますことなく、すぐに切り、アツアツのまま、兄達と一緒に
もぐもぐ食べた。

デコレーションなんか、したことがない。
焼きあがるのをウキウキ待って、すぐ食べた。

私が欲しくて欲しくて、オーブンを買ってもらってから
ケーキは、上も底も側面も、きつね色のケーキになった。

でも、たまに、あの上がきれいなクリーム色になった
ぷっくりふくれたスポンジケーキを食べたくなるときがあるのだ。

♪ こちらもどうぞ ♪

梅の魔女 梅シロップを漬けて2週間。すでにほぼ氷砂糖は溶けていて、炭酸で割って飲みはじめている。そろそろ梅の実を取り出して火を入れないと、と思う。 小鍋に梅シロップを漉しながら入れる。とろりとした薄い金色の液体。 弱火にかけながらゆっくり...
母のクリームワッフル 南部鉄器ワッフル型 小学校が早く終わった日や お休みの日には、 ときどき、母がワッフルを焼いてくれた。 いまどきのベルギーワッフルではなく、 小判型の柔らかい厚い皮を二つに折って、 カスタードクリームを挟んだもの。 ***** まず...
1kgのスパゲッティー 「腹一杯食べたくて、アニキとスパゲッティーゆでたんだよ」 部室で、育ち盛りで大食いのタカハシが、私たちに言った。 「へー、偉いじゃん」 「自炊?カンシン、カンシン」 「どのくらいの量を作ったらいいか分かんなくて、一袋全部ゆでたんだよ...
栗ごはん ~たべものエッセイ~ ***** 栗は買ったり頂いたりしたら、すぐに加熱調理しないと、 あっというまに中で虫が大きく育ち、虫食いだらけになってしまう。 今日は、栗ごはん、という日は、母は真剣だった。 茶色のつやつやのたくさんの栗...
のり入りたまご焼き ~たべものエッセイ~ ***** 母が作ってくれるたまごやきは、砂糖入りで甘かった。 幼稚園のお弁当は、いつも残さずぴかぴかに食べていた。 そんな記憶がある。 ある日、お弁当に入っていたたまごやきは ぐるぐる黒いうずまき模様があ...

♪ Pick up items ♪ スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です