クリームソーダ
~たべものエッセイ~
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外食、それは私の憧れ。
節約を重ねていた我が実家。
たまに五人で行くのはラーメン屋さん。
帰りにもらうペコちゃんのペロペロキャンディーが
とびきりのごちそう。
洋食屋さん、レストランというところになんか、
行くチャンスはまったくなかった。
それでも何かの機会に家族で行ったレストラン。
そのとき、キラキラとしたメニューのなかで
私の目を引いたのは、メロンソーダのクリームソーダ。
緑色の炭酸に丸くて白いバニラアイス。
赤いチェリーに、まがったストロー。
値段を見て、ため息をつく。
ごはんと一緒に頼んだら、千円を超えてしまう。
こんなの、とても親には頼めない。
ジュースでさえ、むり。水でガマン。
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高校を卒業して、じぶんの稼いだバイト代で
食べた、駅ビルのクリームソーダ。
400円以上したと思う。
たぶん、クリームソーダの値段の高さは、器代なのだ。
しゅわしゅわと上に昇る炭酸の泡を見つめながら
ゆっくりゆっくりアイスをつつく。
アイスにくっついて、ジュースが凍って
少しカリカリとしている部分を、
長いスプーンで、そーっと削って口に運ぶ。
ジュースをストローで少しずつ、飲む。
あっけなく、食べ終わってしまった。
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今でも私は、クリームソーダは、メロンソーダに
アイスクリームをのせたものがいいと思う。
ソフトクリームでは、あのカリカリができないから。
私の子供は、外食の時には、
100円のジュースやアイスを頼んだりは
平気でするけれど、なかなかクリームソーダにまでは手が出せない。
私の憧れの外食、贅沢の象徴。
それが、アイスののったクリームソーダなのだ。
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