梅の魔女
梅シロップを漬けて2週間。すでにほぼ氷砂糖は溶けていて、炭酸で割って飲みはじめている。そろそろ梅の実を取り出して火を入れないと、と思う。
小鍋に梅シロップを漉しながら入れる。とろりとした薄い金色の液体。
弱火にかけながらゆっくりかき混ぜると、鍋の中心で、くるくると小さな氷砂糖の粒が回る。
粘度のある透明の液体が、ゆっくり重くスプーンに絡みながら渦を描く。
鍋底から小さな泡が生まれ、氷砂糖と一緒にくるくる周りながら浮かんでくる。
沸騰しないように、小さな火でゆっくりゆっくり。
金色の液体と浮かんでくる小さな泡を眺めながら、魔法の薬を作っているみたい、と思う。
だんだん氷砂糖の粒が小さくなり、完全に消えて、小さな泡だけが次々と鍋底から浮かんで消える。
火を止めた。このまま朝まで鍋ごと冷ます。
薄い金色の魔法の薬は、甘く酸っぱい、初夏の味。
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