音と紅茶の時間

音楽と恋の話、想い出話、今の心模様に、紅茶を添えて。

文芸部

Penstyle Kobe INK物語 【旧居留地セピア】~NAGASAWA

*****

高校時代、私が入っていた部活の一つに、文芸部がある。

私が入部したときは、たくさんの仲良し三年生に、
二人の二年生、そして一年生の私。

文芸部の活動は、ときどき集まって、
好きな小説や文学について語り合ったり、
自分たちの書いた作品を批評し合う、ことなんて
まったくなくて、ただそれぞれが書いたものを集めるだけ。

そして、集めた原稿で、年一回部誌を作成する。それだけ。

それだけだったけれど、私はたくさんの詩や、短い物語をたくさん書いた。

*****

三年生が卒業し、名前を貸してくれる幽霊部員をのぞき、
実質部員は三人になり、文芸部は文芸同好会になった。

同好会会長は柔らかく物静かで、彼の創り出す文章は
とても静かで暗く不気味で、私は彼のつづる小説が好きだった。

会員が一緒の空間で文を作ることはなく、
お互いの作品を読みあう機会もほとんどなく、
ただ、たまに顔を合わせて、原稿増えた?って確認しあうだけだったけれど
「書いている」仲間がいるだけで、一緒に本を作る仲間がいるだけで
私は、たくさんの文をつづることができた。

学校祭の前に、会長がワープロ打ちしてくれた原稿を印刷し、
三人で紙をひたすら折って、重ねて、ホチキス止めした。
そのときが、一番長く一緒に過ごして、一番話をした時間だったと思う。

教室の机の上に、できあがった分厚い文芸誌の山が
私にはとても嬉しかった。

*****

一つ上の先輩たちが卒業し、文芸同好会には、
三年生の私一人だけが残った。

幸い、私の他の部の友人たちが名前を貸してくれたおかげで
廃部はまぬがれたものの、その年は、
私はほとんど何も書かなかったように思う。

一人で原稿を書き、ワープロを打ち、製本し、
学校祭で配る気にはならなかったから。

私が卒業する間際に、めったに話すことが無かった顧問の先生が、
自分のクラスの生徒を部員に引き入れ、廃部の危機は去った。

一度つぶすと、また作るのは大変だから。
そう先生は笑った。

*****

卒業して何年かたって、たまたま職員室で先生に会い、
文芸同好会は、文芸部にまた昇格し、部誌の発行も再開したと聞いた。

私は、私の代で部がつぶれなくてよかったと、なんとなくほっとした。

*****

今また私は、一人で文芸同好会のようなことをやっているけれど、
「書いている」仲間がいると思うから、読んでくれる人がいるから、
書き続けることができるのだと思う。

♪ こちらもどうぞ ♪

義務感で動く 私のとても嫌いなことに、義務感、○○しなければ、 と思って行動することがある。 あと、させられている感。 誰かにやらされている、と思うと、とたんに ものすっごくやりたくなくなる。 私は、自我が強いので、自分のやりたいことを選び取って や...
まだかゆい 庭のつる草で顔と腕がかぶれてしまい、 抗アレルギー剤のセレスタミンを飲み始めて3日目です。 ぼこぼこに腫れていた、まぶたや頬、あごも だいぶ復活し、常に保冷剤で冷やさなければ 耐えられない、というほどの状態ではなくなりました。 薬の副作...
バレエレッスン 心が乱れているときは、身体を正す。 バレエのレッスンにに行くと、いつもそのことを再認識する。 ***** 私が通うバレエ教室は、カルチャーセンターの 月二回の講座で、それさえも仕事や用事でキャンセルすることも多い。 先生は、とても可...
DV夫から逃げられない妻の話 友人の友人の話なのですが。 お互いバツ1、家族構成は夫、妻(友人の友人)、 妻の連れ娘(小学校高学年)。 現在、再婚して5年。ずっと離婚を考えている、と。 ***** 夫が、妻の髪の毛を掴んで、部屋中を 引きずり回すのだそうです。 ...
もう何も書けない・お休み中に考えてたこと... 二週間ばかり、ココロデザイン全体で、 お休みをいただいてました。 実は、お休みに入る前からずっと不調で、 PCに向かっても、まったく記事を書く気が起きず、 最初の10日間くらいは、本気で、ひょっとしたら もうこのままブログを再開できないん...

♪ Pick up items ♪ スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です