愛された記憶
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私の父は、子供を8時までに寝かせることに
とても厳しかった記憶があります。
なので、私と兄たちは、夕食を食べてお風呂に入り、
好きなテレビが始まるまでに、大急ぎでパジャマを着て、
歯を磨き、布団を敷いて、それから、居間で
テレビの前に向かいました。
でも、テレビを見ている間に眠くなっちゃったりして、
じゅうたんの上でごろんと横になり、うとうと、うとうと。
テレビが終わって寝る時間。
がんばって起き上がって、
自分で布団に行くことはできるけれど、
幼い私はよくそのまま目をつぶって、
動けないふりをしていました。
そうすると、しょうがないなぁ、甘えっこだなぁって、
父か母が、小さな私をお姫さまだっこして、
布団まで運んでくれるのです。
ゆらゆら、ふわふわ。
そのゆらゆらは、とてもあたたかくて。
それは、とても幸せな記憶で。
今でも私は、ふとしたときに、そのふわふわを
思い出したりします。
そして思うのです。
私は、確かに、愛されていた存在なのだなぁ、と。
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私には小さな子供が二人いて、
真剣に100%の愛情を注いだりはしていないけれど、
彼らの心の中にも、静かに雪のように
愛された記憶が降り積もっていればいいと、
祈るような気持ちで、願ったりしているのです。
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