音と紅茶の時間

音楽と恋の話、想い出話、今の心模様に、紅茶を添えて。

人は正論では動かない

私は、理屈っぽい子供で、そのまま理屈っぽい大人になった。

社会に出てからも、会社内での矛盾によく憤っていた。

人それぞれに違った正論というものがあり、それを完全に一致させることは相当に難しい、ということをはっきりと意識できるようになったのは、恥ずかしながら、ここ数年のことだと思う。

「・・・するべき」という口癖の人がいる。

私は、ここ数年、「するべき」という言葉は、よほどのことがないと使わないように意識するようになった。「すべき」を連発している人を見て、それ、あなたがそう思っているだけであって、私は「すべき」とは思えないし、世間一般にそうとも言えないよね、と感じたから。

最近は「べきべき」言う人を見ても、腹が立ったりはしなくなって、ああ、この人は「このことに関してこうあってほしい」という価値観の人なんだな、と頭の中で変換できるようになった。他者に自分と同じ価値観を選ぶように強制しない方がいいよ、とは思うけれど。

だいたい、人は正論では動かないものなのだ。

痩せたいという人に対して「運動を増やして消費カロリーを増やし、食事を減らして摂取カロリーを減らし、バランスのいい食事と規則正しい生活を心がけるといいよ。夜8時を過ぎたら食べないようにすればいい」なんて言っても、そんなの知ってるし、分かっててもできないのよ、と返されるのが関の山。

その人に「だからあなたは痩せられないのよ!どうして私のアドバイス通りにできないの?!」なんて怒るのも、余計なお世話だ。

ひょっとしたら「摂取カロリーを減らして消費カロリーを増やせば痩せる」という事実を知らない人がいたら、知識として伝えるだけで、そうなのかと納得して行動に移すことはあるかもしれない。一度くらいは伝えてみるのも悪くないかもしれない。

知識を得たことで行動を変えられる人は「今まで事実を知らなかった」人であり、以前から「正論だと知っていても出来なかった人、選ばなかった人」にいくら正論を説いても無駄なのだ。本人がそれを選ぶ気にならなければ。

宿題は先にやった方がいいって知ってるのにまず遊んでしまったり、茶碗はすぐ洗った方がいいと分かってるのに溜めてしまったり、庭の雑草はこまめに抜けばひどくならないって知ってるのに草ぼうぼうにしてしまったり、まあ、そんなものだよ。

私は若い頃「あなたは間違っている!」と人をズバッと叩きのめすことが格好いいと勘違いしていた。けれど、そんなことをされたら人は傷つくし、しかも反発心を生むだけで、相手が納得し行動を変えることなんてあまりない、と、自分の身に置き換えても、他者を見ていても思うのだ。人を追いつめてよい方向に向かうことなんて、まず無い。

恥ずかしかったな、ごめんなさい、って改めて思う。

人に対して緩くなるにつれて、自分にもずいぶん甘くなったなぁ、って思うけれど、私はずいぶん、前より生きやすくなった。

人は正論通りには動けない、ってしみじみ分かったからさ。

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