音と紅茶の時間

音楽と恋の話、想い出話、今の心模様に、紅茶を添えて。

親へのお年玉

私は社会人一年目で結婚したので、就職した初めてのお正月は、まだ独身。自分の給料から、初めて両親にお年玉をあげたら、とても喜んでくれた。

二年目。結婚して初めてのお正月。私は、自分の両親に、自分の名前を書いたお年玉袋を渡した。ちょっと迷ったけど、自分の給料から、自分の気持ちであげた、自分の親へのお年玉だったから。

そしたら、母が、私をたしなめた。こういうものは、その家の主人の名前で渡すものよ、と。

それは、母からの嫁に出した娘への躾だったのだろう。夫を立てなさいというその気持ちと理屈は分かった。自分の娘が、他家で恥ずかしい嫁としての振る舞いをしないように、という親心もよく分かっていた。嫁に出した娘の恥は、母としての恥だもの。娘が立派な嫁であることが、母の誇りになる。

分かったけど、哀しかった。自分で働いて、自分があげたかった、娘からとしてのお小遣いのつもりだったから。そう説明したら、理解はしたけれど、納得はしにくいようだった。嫁に出した他家の婿から義理の父母へのお年玉という体裁をとるのが常識的だったのだろうとは思う。家と家との付き合い。モヤモヤした。

*

もう、結婚して10年以上経った。今では、私の両親は、私が嫁として礼儀正しく立派であることよりも、娘家族が幸せに暮らしていることを大切に思ってくれるようになった。「嫁として」なんてことも言わなくなった。他家に出した嫁としてではなく、別世帯の自分の娘として見守っていてくれる。

こっそり母は、私に父に内緒でお小遣いをくれることもある。「私」からね、って。それから、ここ数年は、おじいちゃんから、だけじゃなくて、私からだってあげたい、と言って「おじいちゃんから」とは別に「おばあちゃんから」という小さなポチ袋も孫に渡すようになった。時代はいつのまにか、少し、変わったらしい。

年末、親にお年玉を送るとき、ポチ袋には父と母の名前だけ書いて、夫の名前も私の名前も書かないことにした。実家に荷物を送る時は、一歩譲って夫の名前を送り状に書くことも多い。ちゃんと結婚生活を送っているよって姿勢をたまには見せて、親を安心させることも大事かな、とか。

毎年、お年玉の用意をするたびに、結婚した初めてのお正月のことを思い出すんだ。

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