過去の記憶3・親友?
過去の記憶2より。
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転校すると、いつも思う。
最初にすぐ近寄ってきて、親切にしてくれた子と
のちのちずっと仲良しでいられることは少ない。
私は、たぶん、そういう子と同じタイプではないのだ。
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転校先で、同じクラスで、同じ団地の隣の建物に
住んでいる、シホちゃんという友達ができた。
母親同士も仲が良く、放課後よく一緒に過ごした。
シホちゃんは、いわゆる女子らしい好みを持つ女の子だった。
部屋に並ぶ本は、明星、なかよし、りぼん。
シホちゃんは、光ゲンジの誰が一番人気か、
でもやっぱりカーくんが可愛い、とか、力説してくれた。
私は、光ゲンジの誰が誰かなんて
さっぱりどうでもよかったけれど
歌って踊ることが大好きだったので、
中森明菜・誕生物語を読みながら、
いつかおニャン子クラブの
オーディションを受けたいなどと
妄想にふけっていた。
私は、兄たちの買う週刊少年ジャンプを
いつも読んでいたが、
シホちゃんの好きな少女漫画雑誌りぼんも
面白かった。
目がキラキラ、まつ毛がバサバサしすぎている
細い線の絵のマンガは受け付けなかったが、
大好きな話もたくさんあった。
シホちゃんは、本にカバーをかけて
背表紙をきっちり揃えて本を並べる。
私たちは、好みも考え方もあまりに違っていたので、
共感することは少なかったけど、
あなたはこう考えるのね、
わたしはこう考えるよ、なんて話をして
全然違うよねって、よく笑った。
一緒に買い物に行っても、
わたしはこの茶色いバッグが好き、
あなたなら、この紺のポーチを選ぶよね、
なーんて話もよくした。
考え方は違っているけれど、
相手がどんな風に考えるのかは分かっていて
それはそれでいいって思えたから、
私たちは、友達としてやっていけたのだと思う。
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ある日、シホちゃんが、言った。
わたしたち、しんゆうだよね?
って。
親友って言葉に、憧れる年頃だった。
価値観も違う、共感することも少ない。
親友、なのかな?
疑問を持ちながら、
う、うん。
と、返事をした。
私たちは、同じ中学校に進学した。
そして、違うクラスになった。
私は合唱部に、シホちゃんは吹奏楽部に。
私は、一緒にいて、全然違うことを考えている
親友と、距離が置けることに
少し、ほっとした。
それでも、私たちは、
少し距離を置きながらも、ながらく付きあうことになる。
価値観が違っても、友達になって関係を作っていける。
そんなことを教えてくれた、貴重な友人。
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