音と紅茶の時間TOP恋のキオク
2012年12月15日

めんこい



アンティーク風 水玉プリント〜生地の森

*****

10代の終わりころに付き合っていた人。
6つ年上だった人。

会うたびに、目を細めて、
「めんこいなぁ」って、私に言った。

頭を撫でられて、いつも子ども扱いされていると
私はむくれたものだけれど。

そして、彼の故郷で、いつまでも手元にいてほしいという
彼の元から飛び出してしまった私だけれど。

別れ話をしながら、わんわん泣く私の涙を
彼は指でそっとぬぐって、
「泣くなよぉ、泣きたいのはこっちだぞ」
と、困った顔で言ったっけ。

彼のまなざしは、いつも優しく、あたたかかったなぁ。

あんな風に、「大好き」「かわいい」「いとしい」の
気持ちがつまった目で、見つめられてみたいなぁ、なんて、
ふと、急に、思ってしまった。

こんな寒い日に。

タグ:めんこい
posted by かこ at 19:19 | Comment(0) | 恋のキオク
2012年09月05日

忘れられない男

私が、今まで生きてきた中で、
一番魅かれた人を一人あげるなら
それはもう、間違いなくフジモトさん(仮名)だ。

フジモトさんは、大学の同じ学科の先輩で、
私が入学した時は、すでに留年2回目だったのかな?

フジモトさんはとても私の好みの声を持っている
音楽的センスの良い、合唱部員だった。

私は、高校時代の合唱部の人間関係で疲れ果てていたので
大学では、合唱部には入るまい、と心に決めていた。

そこで、私は違うアカペラサークルに入ったのだが、
大学の合唱部の人達とも気が合ったので、
ときどき歌いに行ったりもしていた。いわゆる幽霊部員。

フジモトさんも、私のアカペラサークルを面白がって
ときどき歌いに来たりした。

すごく好きだったなぁ、フジモトさんと歌うの。

*****

サークルで会うとき以外は、
ほとんどシラフで話していた記憶がない。

当時は、ポケベルを持っている子もいたけど
携帯電話なんてものは無かったので、
基本的に家の電話で呼び出されるか、
ばったり学内で会った時に、今日夕方飲まん?って誘われるか
仲間内で飲んでるときに、いつのまにか、
誰かが呼び出したり、呼び出されたり。

行きつけのジャズバーは、彼のアパートの割と近くにあったので
お酒を飲んでは、会いたくなって公衆電話で呼び出してみたり、
帰りがけに、うろうろ通りかかってみたり。

まあ、タイミングが合わなくて、会えないことも多かったけど。

仲間と飲んでるうちに、まあ、家で二人でのんびり飲もうや
と言う話になって、抜け出して、お互いのアパートでだらだら
朝まで飲んでることは、よくあった。

男女二人で飲んでて、何もないってことは、もちろんなく。

古くかわいらしい言葉で言えば、友達以上、恋人未満って関係だった。
まあ、ただ、お互いに気に入っている飲み仲間ってやつだったかも。

周りからみたら、私は、あきらかにフジモトさんの女、
に見えていたような気はするけど。

ああ、そうだ、フジモトさんは、私の脚がきれいで好きだと
よく褒めてくれたっけ。

*****

フジモトさんとは、付き合おうと言われたこともないし
付き合って、と言ってみたこともない。

だって、いつも他の女の影が見え隠れするんだよね。
そんな相手に本気になったら、逃げられるだけ、
と、思っていた。

まったく、飲んだくれの、声のいい、たぶん女にだらしない
ろくでもない男だった。

私にも、ちょくちょく男がいたりしたので、まあ、人のことは言えない。

ときどき、すごく踏み込んで捕まえてみたい、と思ったことは
あったけれど、その度に、フジモトさんはするりとかわして
しばらく会えなくなった。

それは、フジモトさんが、計算でやってたのか
たまたまタイミングがそうだったのか、今でも分からないけど。

この会いたくても、次はいつ会えるか分からないってとこも
私を強く惹きつける一因になっていた。

*****

フジモトさんの留年仲間が、飲みながら教えてくれた。

私と会う前のフジモトさんは、すごく真面目で
大切に付き合ってる彼女がいたのだと。

そして、彼女は妊娠してしまい、中絶。
彼女の親は激怒し、実家に連れ帰ってしまった。

中絶費用を払うため、バイトを増やし、そのあげく留年。
留年分の学費を払うため、バイトしてたら、また留年。
飲んでるうちに、留年。

フジモトさんは、とても彼女のことを大切にしていた。
彼女がいなくなってから、女に本気で惚れている姿を
見たことはない、と。

私は、いろいろ納得して、私に本気で惚れてくれればいいのに
って思う気持ちを口に出すのは、やめることにした。

だって、逃げられるくらいなら、気楽なお気に入りの飲み仲間で、
たまに、となりに置いて、かわいがってくれる方が、
よかったから。

じっさい、私に付き合っている人がいるときの方が
飲みに誘われることが多かったので、
ホント、お互い、都合のいい相手だったんだろうな。

私は、呼び出すと、必ず出てくる、本気にならない飲み相手。

ちゃんとしたキスなんて、ほとんどした覚えがない。

*****

私が大学在学中、フジモトさんに彼女がいるって話は
結局、聞いたことがなかった。

そして、私が4年で大学を卒業するとき、フジモトさんは8年目で
あと一単位をとれば卒業できるのに、その試験をブッチした。
で、結局、中退扱い。

まったく、もう。

くれっていうから、過去問題を手に入れて、解答を作って
持って行ってやったっていうのに。

*****

私は、大学を卒業して、遠くに就職してからも、
ちょくちょく、フジモトさんの夢を見た。

呼び出されて、二人でだらだら飲んで、
抱かれて、すごく嬉しくなってしまう夢。

目が覚めると、あーあ、また見ちゃったよって
切ない気持ちになる。

これは、気持ちをぶつけてみなかったから、なんだろうなぁ、と。

*****

卒業したあと、数年経って、
大学の合唱部の記念演奏会に歌いに行った。

目的は、切ない夢と、決着をつけるため。
そして、ただ、フジモトさんに会ってみたかった。

フジモトさんには、公認の彼女ができていた。
丸顔で、すごく素直そうな、可愛らしい平凡な女の子。

ああ、ちゃんと、女と向き合う気になったのね。
と、しみじみ感慨深い気持ちになった。

そして演奏会の後の打ち上げで飲み、その後、私たちは
こっそり二人で抜け出し、やはり朝までだらだら飲んだ。

  私たち、付き合ってたって言えるのかなー?

  付き合ってたんじゃないの?
 
  私のこと、気に入ってたでしょ?好きだった?

  うん、好きだったよ。

そんな、マヌケな会話を交わし、
まあ、酒の雰囲気に飲まれた社交辞令だったのかもしれないけど
そんな言葉をもらって、私は、気が済んだのだ。

そして、朝になって、フジモトさんの携帯に彼女からの留守電と、
着信がたくさん入ってたって話を聞いて、私はかなり満足した。

この後、言い訳大変ね、がんばってねー、なんて笑った。

まったくヒドイ話。

*****

それきり、フジモトさんの夢は、あまり見なくて済むようになった。
たまーにみて、あちゃーって思っちゃうけど、
落ち込むことはなくなり、ちょっと甘い気持ちになる。

でも最近は、夢、すっかり見なくなったな。

OB会からの情報を見ると、今でも彼は大学近くにいて、歌い続けている。
そして、まだ、結婚はしていないらしい。

もう、私が会いたいと思わなければ、一生会うことのない人だけど
会えない相手ではなかったりする。
会ったら、きっとまた、うっかりだらだら朝まで飲んでしまう。

まあ、もういいんです。済んだ話。

済んだ話だけど。
やっぱり今でも、心のどこかで魅かれている気持ちは残っている。

つかみどころのない、飲んだくれの、女にだらしない
とてもいい声を持つ、私の心をときどき強く捕まえた、
心の片隅で今でも好きな、いいかげんな男。

タグ: 飲み
posted by かこ at 11:07 | Comment(0) | 恋のキオク
2012年07月18日

ミッキーマウスな彼〜目次

1/4   1.頬を唐突につかむ
    2.成績優秀者集団

2/4    3.神戸の志望校と震災
     4.私大合格
     5.雪道の告白

3/4   6.大学進学
    7.留学と決断
    8.別れを告げる    

4/4   9.自殺未遂?
   10.無言電話と別のストーカー
   11.今でも想う  


posted by かこ at 18:37 | Comment(0) | 恋のキオク

ミッキーマウスな彼〜4/4

9.自殺未遂?

別れを告げた帰り道、彼は、私の目の前で
新幹線のホームに跳び下りようとした。
私は、彼が死なないように、別れないから、と言った。
すると、彼は、大勢の目の前で、
泣きながら私を強く抱きしめ、長いキスをして
新幹線に乗り込んで、帰って行った。

勘弁してほしい。
ホームに取り残された私は、そそくさとその場を離れた。

すぐその後の夜、彼から電話があった。

・・・く、苦しい、今、・・・手首を切ったから・・・、
と切れ切れに声が聴こえる。

手首を切ったくらいで、死ねるわけがない、
そうは思いながら、かなり心配だった。

大丈夫?今、救急車をそこの住所に呼んであげるから。
実家に連絡しようか?
私のために、お願い、そんなことしないで、と
赤ちゃんに話しかけるような声で、私は話しかけ続けた。

大丈夫・・・止血したから・・・
 ・・・救急車は呼ばなくていい・・・

そう?ちゃんと止血してね。手首、もう切らないでね、
お願い、と、優しい声を作って、電話を切る。

実家に連絡する?・・・実家の電話番号すら、分からない。
私は、彼のことを何も知らなかった。

私は、予備校時代の頭の切れる女友達に久しぶりに電話をした。

こういうことがあって、別れようとしたら
自殺するって脅かされて、今、手首を切ったとか言ってて・・・。

分かった。実家には念のため連絡しておく。別れていいよ。
彼女は、そう言ってくれた。
彼女も、彼の危ういところはよく知っていたから。

私は、少しだけ、安心した。


10.無言電話と別のストーカー

それから、毎晩のように、無言電話がかかってくるようになった。
無言、だけど、すすり泣く声が、ずっと聞こえてくるのだ。

すぐ切っても、またかかってくる。
仕方なく、受話器をあげたまま、放置した。

大学の女友達の中には、そんなに思われているのに
別れるなんて、ひどすぎる、と怒る子もいた。

それはそうかもしれないけど、でも・・・
私の気持ちを殺して、彼と付き合い続けなさいってこと?
それは、どうしてもできない、と思った。

合い鍵は渡してはいなかったけれど、
頭の切れる彼のこと、知らない間に合い鍵を
作られてしまっているかもしれない。
ひょっとしたら、盗聴器も仕掛けられているかも。

私は、帰宅すると、ベッドの下や、ベランダ、
クロゼット、家中の扉を開けて、真剣に誰もいないことを
確認するようになった。

***

その頃、私は、大学内の「ぷよ」と呼ばれる
有名な別のストーカーにも付きまとわれて、ほとほと困っていた。

教授と一緒にたまたま食事をした。
その後、笑顔で挨拶をした。普通に会話した。
それだけで、その年度のターゲットになってしまったのだ。

毎朝のように、通学中に、授業の移動中に
また会いましたね〜、と声を掛けられる。

「ぷよ」がまた来てるよ、と友人たちがそっと教えてくれる。
講義室まで、のぞかれるようになった。

私は「ぷよ」の標的だということで
ちょっとした有名人になってしまった。

ヤバい人には、普通に笑顔で挨拶をしない。
私は、そう、心に固く誓った。

***

その二人のストーカーのダブルパンチで
私は、かなりノイローゼ気味だった。
もちろん、離れた親に相談するわけにはいかない。

私は、そのころ一緒によく飲んでいた男友達に相談した。

現金なものだ。私は、その時、その彼に魅かれていた。
声と音感が良くて、お酒に強くて、女好き。
けして、私を独占しようとしないし、
私が、もし捕まえようとしても、するりと逃げてしまう人。

私を大切にしてくれる感じではないけれど、
私を気に入って、ときどき声を掛けて遊んでくれる。
その自由な空気が、嬉しかったのだ。

男友達は、電話でミッキーな彼と話をつけてくれると言った。

すすり泣く声が聴こえる受話器を男友達に渡した。
何やら彼は、静かな怖い声でしばらく話をして電話を切った。

それきり、無言電話がかかってくることはなかった。

***

私は、別のストーカー「ぷよ」には、
迷惑です、近寄らないでくださいと
毎回、はっきりと嫌な顔をし続けることにした。

「ぷよ」は、しばらくして、私から
別の優しく気弱な女の子に、ターゲットを移した。


11.今でも想う

15年以上経った今でも、ミッキーマウスを見るたびに、
彼のことを思いだす。

彼は、ちゃんと生きているだろうか。
自分自身の人生をちゃんと歩めているだろうか、と。

会いたいとは思わない。でも、どうしているかな、と思う。

***

彼は言った。かこのせいで人生が狂った、と。

本当に、そうだったかもしれない。

でも、私はこうも思う。

人生を狂わせたとしたら、それは、彼自身の意思。

彼が愛したのは、私ではなく、
私を愛していると思い込んだ、自分自身だったじゃないのかな、
って。

だって、彼は、私のことをちっとも理解していなかった。
私が何が好きで、何が嫌いか、
私がどうやって生きていきたいか。

高校も違って、共通の友人もほとんどいなかったから
今、彼がどうしているかなんて、私には知る術はない。
絶対、ではないけれど。

ミッキーを見るたびに、私は、祈るような気持ちになる。
私と一緒では、幸せになれなかったけれど。

だって、私は、確かに、彼のことがとても好きだったんだもん。
若い日の気の迷いや勘違いは、混じっていたかもしれないけれど。

どうか、どこかで、しぶとく元気で暮らしていてほしい。
私の手の届かないところで、
自分自身の力で、生きていてほしい。

今でも、なお、ずっと願っています。
どうか、幸せになっていてください、と。


posted by かこ at 18:33 | Comment(0) | 恋のキオク

ミッキーマウスな彼〜3/4

6.大学進学

7割が男子の理系の大学。
私は、すぐにたくさんの男の子達から声を掛けられた。

クラスメイトや、サークル関係、
バンド仲間、ジャズバーで知り合った人たち。
ミッキーな彼は、京都から岡山へやってきては
大学の講義室にまで乗り込んで、
自分は、かこの彼氏であると強調した。

その頃は、携帯電話なんてなかった。
夜、バイトや、友達と遊んだり、飲み会でいなかったりすると
ぐちぐちぐちぐち、文句を言った。

指輪を必ず、いつでもはめていてほしい。
合い鍵を渡してほしい。
毎晩、電話で話したい。

そして、毎回のように電話で泣くのだ。
かこに会えなくて、淋しい。
かこに会えなくて、不安だ、と。

合間になぜか、ママの焼いたケーキが
世界で一番うまいんだ、なんて自慢話もよくした。

じゃあ、ママと結婚すれば?と
私は、彼をかなり覚めた目で見るようになった。

泣かれるたびに、心が冷えていくのを感じていた。
私は、束縛されるのが、大嫌いなのだ。

私は、男の子に甘えて頼られてしまうことも多いけれど
全面的に甘えられるのは、本当に勘弁してほしい。

一方で、でも、彼は、大丈夫なの?
私と離れたら、どうなってしまうの?
と、心配し、悩んでもいた。

私もまた、重荷を感じながらも、自分を強く必要とし、
愛される価値のある人間だと思わせてくれる彼を
やはり必要としていた。

彼から離れることが、不安だった。

それは、打算の混じった少し狡い気持ちだったかもしれない、
と、思う。


7.留学と決断

夏休み、私は大学の交換プログラムで一か月、アメリカに留学した。

当然、彼には反対された。
でも、私は、彼と距離が置けることに、かなりほっとしていた。

彼のことを考えなくていい日々の中で、私は決めた。
やっぱり、彼と別れよう。

これ以上、束縛されるのは、いやだ。
私の人生の邪魔をされるのは、いやだ。


8.別れを告げる

短期留学から帰ってきて、別れを告げると、
彼は涙を流しながら、こう言った。

かこと別れたら、僕が存在している意味がない、と。

さらに続けて、東北の国立大学に受かっていたのに、
かこが岡山に来たから、蹴って京都の私大にしたんだ、と。

私は、その言葉に、心がさーっと冷めた。

人生の決断を女のせいにした。
自分の存在意義を女にかける。

そんな人とは、付き合ってはいられない。
そこまで依存されて、私は一緒に生きてはいけない、と。


posted by かこ at 18:32 | Comment(0) | 恋のキオク