ミッキーマウスな彼~1/4
ミッキーマウスを見るたびに、いまだに思い出す。
ミッキーのTシャツに、ミッキーの腕時計を愛用していた、
予備校時代から大学にかけて付き合っていた、元彼氏のことを。
1.頬を唐突につかむ
彼を初めて認識したのは、予備校で後期になって
北大理系コースから、東大・京大理系コースに変更して
まもなくの頃。
予備校の階段で、すれ違いざま、彼が私の頬を
いきなりつまんだのだ。
あ、やっぱり柔らかいって、ホントだったんだー♪と。
やっぱり、って何?と思いながら、
私は、高校時代も親しい友人たちに
かこのほっぺって柔らか~い、と、ひっぱり伸ばしながら
言われ続けてきたことを思い出した。
それから、別れたばかりの彼も、
よく嬉しそうに、私の頬をつまんでいたことを思いだす。
その年上の彼には、かこには、いつでも自分の手の届く、
地元札幌の大学に進学してほしいと言われ続けていた。
自分の人生を自分以外の人に決められるなんて
真っ平御免。そう思って別れたのだけれど。
2.成績優秀者集団
通りすがりに、いきなり頬をつまむ、という戦法で、
見事、私に自分を印象付けた彼は、
その後も、何かにつけて話しかけてきた。
階段で、自習室で、廊下で。他の予備校の短期集中講座でも。
そして、私は、彼が同じクラスにいることに、ようやく気づいた。
人懐っこい笑顔、でも、メガネをかけた白い神経質そうな顔と声。
たまにミッキーマウスのTシャツを着ていて
ミッキーの腕時計を常にはめていることにも。
彼の友人集団も面白かった。
二浪、三浪で、東大、京大をめざすグループ。
知名度の高い、中高一貫の男子進学校出身の男の子たち。
それから、頭のとてもよく切れる女の子。
この人たちは、面白いけど、ヤバい、と思った。
人間的に、どこか欠落して、歪んでいる。
しかも、私は実は、飛びぬけた才能を持っている
性格の歪んだ人間にとても弱いのだ。今も昔も。
さらに、そのグループには、一人だけ、
とても心優しい、私と同じ高校出身の女の子がいた。
ミッキーな彼の、彼女だった。
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