音と紅茶の時間

音楽と恋の話、想い出話、今の心模様に、紅茶を添えて。

盗品博物館

とても素敵な博物館があるの、大人気なのよ、と知人が教えてくれた。

連れられて行ってみると、本当にうっとりするような展示物ばかり。たくさんのため息まじりの歓声が聞こえてくる。なんて素敵なの!これはどちらで買えるのかしら?

鑑賞していて気づいた。画家の名前が書いていない。この絵画は誰に描かれたもの?博物館の館長?

絵画を事典で調べてみると、以前、ある画家が描いたものだと分かった。画家に手紙を書き、訊ねてみた。こちらの博物館にあなたの作品が展示されているのはご存知ですか?

製作者の名前がない多くの作品があった。事典で作者名を見つけるたびに、手紙を書いた。これはあなたの作品ですか?

***

何通もの手紙に答えはなく、諦めかけた時に一人の画家から返事が来た。

ああ、これは私の描いた絵です。こんなところに展示されているなんて知らなかった。これは知らない間に盗まれたものです!

もう一人の彫刻家は言った。

展示を許可した覚えはありません。なんてことだ、タイトルが間違っている!

画家は、博物館館長に手紙を書いた。私の絵を展示するのでしたら、私の名前も添えて下さい。

彫刻家も、館長に手紙を出した。僕の彫刻を展示するのでしたら、作品名を正しく記載して下さい。

画家と彫刻家へ、手紙の返事はなく、そのまま作品の展示は続けられた。彫刻は、間違ったタイトルで雑誌に掲載された。

画家と彫刻家の嘆きを受け、新聞記事を書いた。この作品の作者はこの方で、正しい作品タイトルはこうですよ。展示物は、作者に許可を取らずに展示されているものですよ、と。

***

ある人は言った。盗品だとは知らなかった、もうあの博物館には行かないでおこう。

また、ある人は言った。盗品でもいいじゃない?素敵なものがたくさんあるもの。館長さんも集めるのも大変でしょうし、私が盗んだ訳じゃないわ。

ある人は言った。盗品を展示するような博物館は、閉館すべきだ。

盗品を展示するのはやめるように、博物館に手紙を出す人もいた。

盗むのではなく、許可を取って、作家の名前と作品名をきちんと書きさえすれば、とてもいい博物館なのに、と嘆く人もいた。

気に入っている博物館の評判を落とすような新聞を出すな、と怒り出す人もいた。

しかし、多くの人達は、盗品だと気づかずに博物館に通い続けた。展示物が増え、博物館はますます人気の博物館になった。

***

ある日、博物館に、作家名が添えられた絵本が並んだ。

ある人は言った。素晴らしい!盗品展示をやめて、役に立つ博物館に生まれ変わったんだね!

しかし同時に、新たに名前のない写真も並んでいた。

ある人は考えた。盗品と盗品ではないものが一緒に並んでいるのはどうしてだろう?

ある人は思った。絵本作家は、盗品と一緒にご自分の絵本が並ぶのを承知の上で展示を許可しているのかしら?

***

ある職人に、博物館館長から電話がかかってきた。あなたのガラス細工を展示させて下さい。

ガラス細工職人は言った。私は博物館に盗品が展示されているのを知っています。今後全ての展示物に作家名を添えるのでしたら、展示をお願いしたい。

館長は言った。あなたの作品にあなたの名前は添えますが、他の作品に関しては、あなたの気にするところではありません。

職人は言った。盗品展示を止めてから改めてお誘いください。私にも、他の作家にも、来場者にも失礼です。

***

そしてまた、作家名がある展示物も、誰が作ったか分からない作品も、新たに追加された。

あいかわらず今日も博物館には多くの人が訪れる。

***

・・・これは今、インターネットで起きている物語。

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