音と紅茶の時間TOP
2014年12月10日

1kgのスパゲッティー

「腹一杯食べたくて、アニキとスパゲッティーゆでたんだよ」

部室で、育ち盛りで大食いのタカハシが、私たちに言った。

「へー、偉いじゃん」

「自炊?カンシン、カンシン」

「どのくらいの量を作ったらいいか分かんなくて、一袋全部ゆでたんだよ」

「え?一袋って1kgとか?」

「そうそう、一キロ」

「バカじゃね?いくらなんでも」

「基本は一人前100gだよね、タカハシとタカハシ兄が大食いでも300gが限界じゃない?」

「そうなんだよ、ゆでてる間に鍋からあふれてくるし、オフクロが作って置いといてくれたミートソースも足りなくなるし、食っても食っても、どんどん増えてちっとも減らねーんだぜ?死ぬかと思ったわ」

そう言って、タカハシは、とても愉快そうに、カラカラ笑った。

私たちも、馬鹿だなー、って言いながら、ゲラゲラ笑った。
身体のでかい男二人が食べても食べても減らない鍋に山盛りのパスタを想像すると、おかしくて仕方がなかった。

バカで能天気でロマンチストな高校生のタカハシは、同じ値段ならカロリー高い方が得じゃね?と言って、でっかい菓子パンをわざわざ選んで買っていた。

いつもお腹が空いて、食べても食べても、まだまだ足りなくて、山盛りの料理やバイキングや食べ放題に憧れていた、高校生だった頃の私たちの話。

posted by かこ at 11:48 | Comment(2) | おいしい記憶
2014年12月06日

かつやの踊り子

久しぶりに、かつやに行った。
ふみちゃんに呼ばれた気がして。

私は、以前、ふみちゃんにお願いしたのと同じ、
梅のカツ丼を注文して、熱いお茶をすすりながら、
ふみちゃんのことを考えていた。



ふみちゃんは、文子さん、と言った。
初めて聞いた時に、きれいな名前、と思った。
ふみちゃんは私より少し年上で、背筋がすっと伸びた、
背の高いお姉さんだった。

私とふみちゃんは、一緒の舞台芸術の学校の研究生で、
泣いたり、笑ったり、叫んだりしながら、小作品を作り、
身体中にあざをたくさん作りながら、ダンスの稽古をした。

浴衣を着て、何度も倒れては起き上がり踊る姿には
鬼気迫る勢いがあって、私は、彼女に見とれたものだ。
どうして、あんな風に、あの人は踊るのだろう、と。

芯が強くて、優しくて、ちょっと淋しげに笑う人だった。

ふみちゃんと話すとき、私は少し甘えっ子になった。
私は、ふみちゃんのことをもっと知りたくて、バイト先の
かつやに会いに行った。

エプロン姿のふみちゃんは、来てくれたの?ありがとう、
と言って、ふふふ、と笑った。



ふみちゃんは、実は身体が弱くて、その後、入退院を
繰り返し、若くして逝ってしまった。

ご両親からいただいた葉書には、戒名が記されていて、
文子さん、という名前と同じように、とてもきれいだな、
と思った。

文子は、短い人生でしたが、皆様に囲まれて幸せだったと
思います、と、書いてあった。

だから、ふみちゃんは、あんなに一生懸命に踊っていたんだ、
と思った。



ふみちゃんを思いながら食べたカツ丼は、半熟の卵が
とろとろで、あの時と同じ味がした。
涙がじわじわにじんできて、胸が詰まって、困ってしまった。

私は、ふみちゃんに、会いたかったんだと思う。

posted by かこ at 23:31 | Comment(0) | おいしい記憶
2014年11月29日

どこかに居場所があればいい〜3月のライオン(10)羽海野チカ

3月のライオンは、自分の居場所を見つける、というのが
メインテーマなんじゃないかと思う。

この漫画を読んでいると、自分の学生時代を思い出したり、
子供たちの学校生活を想ったりする。

クラスで居場所が無かったり、部活でうまくいかなかったり、
そんなとき私は、気の合う友人がいる違う部室に、ふらふらと
おじゃましたりしていた。

自分が一番時間を長く過ごす空間で、素のままで気を緩めていて
居心地がいいのが、本当は一番いいのだけれど。

自分が受け入れてほしいと思う人に、受け入れてもらえない
という経験は、きっと誰にでもあることなのだと思う。
全ての知り合いと仲良くできるなんて、幻想なんだ。

クラスのアイツとはうまくいかないけど、違う学年のアイツとは
ウマが合う。そんなんでいいんだと思う。

誰とでも心から仲良くなんてできなくていい。
気の合う友達と付き合えばいい。近くにいる気の合わない人も
排除するのではなく、存在を認めて、やりすごせばいい。

主人公の桐山くん〜零ちゃんは、家に居場所がなかった。
自分の根っこにある空間でいつも孤独を感じていた。
光の届かない沼の底に飲み込まれていくような暗い感情。

今の桐山くんは、自分の居場所を見つけることができたんだな、
って思う。守りたい居場所。
桐山くんを理解して想ってくれている人達も、何人もいる。

一巻からずっと、がんばれがんばれ、って思いながら読んできた。
ひなちゃん、優しい川本家の人達も幸せでいてほしいと願う。

それにしても、3月のライオンを読むと、おいしいごはんを
食べなきゃな、っていつも思う。

どこかで居場所が無くても、一ヶ所にでも自分を認めてくれる
人や空間があって、おいしいごはんがあれば、それだけで、
優しい気持ちで生きていくことができるから。






posted by かこ at 13:32 | Comment(0) | つぶやき

人は、見つめている方へ、向かって行く

スキーを滑るとき、木にぶつからないようにするには
どうしたらいいか知ってるかい?

木を見ないで、進みたい方を見ていればいいんだよ。

ぶつかる、そっちに行くと危ないって思った時は、
行きたくない場所を見るのではなくて、行きたい
ところだけに目を向けるんだよ。

視線の向きに沿って、スキー板も進んでいくんだよ。

*****

小学生のとき、スキー場で、父が教えてくれたことを
ふと、思い出した。

身体は、視線を向けた方に、進んで行く。

人は、見つめている方へ、向かって行く。

*****

ああはなりたくないという他者を眺めるのではなく、
足元だけに視線を落とすのではなく、
こうありたいと思う自分の少し先を見つめていたい。

人は、見つめている方へ、向かって行くのだから。

posted by かこ at 11:33 | Comment(2) | つぶやき
2014年11月03日

秋風

今日は天気がよくて 風が気持ちよくて となりには君がいる

それ以外に 何がいるっていうんだい

今日はごはんがおいしくて 空が青くて となりには君がいる

それだけで もう最高に幸せなんだ

一緒に笑って 君の笑い声を聞かせて

それだけで もう最高に幸せだったんだ

posted by かこ at 14:13 | Comment(0) |