音と紅茶の時間TOP紅茶の話
2012年04月15日

紅茶専門店の気難し屋の店長6

テイスティングのお話はこちら

*****

表参道の紅茶専門店で、紅茶にそえるお茶菓子は
店内の小さなキッチンで、焼き上げます。


小さなクッキー、フィナンシェ、スコーン、
チーズとペッパーのプレッツェル。
チーズタルトに、りんごのタルト、レモンケーキ。


お食事は、シンプルな、
スモークサーモンと、きゅうりのサンドイッチだけ。


それから、オーナー店長の意向で入れた
冷凍ケーキ。


単価が安くて、利益率も高く、種類もあるけれど、
こだわりの雇われ店長サトルさんは
内心どうしても納得がいかなかったようで、
できるだけお客さまに、
おすすめしないようにしていました。


焼きたてのお菓子は、盛り付けも大切。
五感で味わっていただけますよう。


大きい白いお皿の真ん中に、小さく載せて
可愛いエディブルフラワーをちょこんと添えて、
とびきりの焼菓子をどうぞ、と。


*****


紅茶入れができるようになると、
私は、すぐにお菓子作りも任されるようになりました。


サトルさんが作り上げたレシピは
完成度がとても高く、紅茶を引き立てる納得の味。


レシピさえ、おいしくできていれば
良い材料を使い、レシピ通りの作り方、手順、
きっちりと計量し、焼き上げ温度、時間を守れば
おいしいお菓子が焼き上がらないわけがない、
というのが、私の持論。


私は、接客で、あまりに忙しくて、
途中で手が離れてしまった時以外は
確実に、おいしいお菓子を焼き上げることができました。


それでも、なぜか壊滅的に、おいしくないお菓子を
作ってしまうスタッフもいるんです。
多分どこか、思い込みで
違うことをしてしまうんでしょう。


*****


私に紅茶入れと、製菓を任せるようになり
余裕ができたサトルさんは、
裏のキッチンで、念願の新しいレシピ開発に
いそしんでいました。


作るのは、紅茶にも合う、ガトーショコラ。
ガトーショコラは、風味が強いので
紅茶に合うようにするには、なかなか難しい。


最初に出来上がったガトーショコラも
それなりにおいしいものでしたが、
こだわりのサトルさんが、それで納得するわけがなく。


ミルク・スイート・ビターのチョコレートの
配合を変えたり、メーカーを変えてみたり。
焼き上げ時間や温度を変えたり、
砂糖や粉の分量を変えたり、一部をココアにしてみたり。


そのたびに私も試食して、
ちょっと苦みが強すぎます、とか、
しっとり具合が足りないです、とか、
もう少し甘さを控えめに、などど、感想を伝えました。


ある日、試食したガトーショコラ、
あ、これ、おいしい、とつぶやいた私の言葉に
とても嬉しそうな顔で、そうでしょう?
これでいきます、と笑いました。


*****


私たちは、裏のキッチンでいろんな話をしました。


紅茶の話、新しいレシピの話、他の紅茶やさんの話、
自分でやるなら、どんなお店にしたいか。


サトルさんは、ハワイ風のロハスな紅茶専門店を
作りたいって、言っていました。


ハワイで紅茶、なんですか?
こだわりのサトルさんなのに、英国風ではなく?
と尋ねる私に、ハワイが好きなんです、と
照れくさそうに笑っていました。


それから、新しいスタッフの女の子を
泣かせてしまいました、
かこ、フォローしておいてください、とか、
どんな風にしたら、おいしい紅茶をいれられるように
してあげられるんでしょうか、なんて
相談もされるようになりました。


彼は彼なりに、自分の不器用なやり方を
気にしていたんだと、私は、今でも思います。


私が、うっかりお皿を割ってしまって、
お給料から引いておいてください、なんて言っても
そんなことしてたら、
かこの給料がなくなっちゃいますから、って
笑って許してくれるほどに、
私たちは、打ち解けるようになりました。



次は、最終話。オーナー店長の心変わりの話です。


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posted by かこ at 09:19 | Comment(0) | 紅茶の話

紅茶専門店の気難し屋の店長5

紅茶入れの練習の話はこちら

*****

お店が空いていると、ふと、サトルさんが
おいしい紅茶を入れてくれるんです。


でも、もちろん、ただ出してくれるわけはなく。


さて、かこ、この茶葉は、何でしょう?と。


つーんとメントール系の香りがするのは、ウバ。
甘くてこっくりとした味のアッサム。
すっきりとして、ちょっと緑茶に通じる
味のする、ダージリン。
明るい赤色がきれいで、スタンダードな味のディンブラ。


茶葉が当てられないと、鼻で冷たく嬉しそうに
笑われるのは分かっているので、
スタッフ一同に、緊張が走ります。


茶葉を当てられない新人スタッフもいましたが、
私は、紅茶のテイスティングは得意で
正解しては、サトルさんをがっかりさせていました。


だって、分かってしまうんです。
サトルさんが入れた紅茶は、きちんと成分が出ていて
その茶葉の特徴がはっきり出てしまうので。


*****


紅茶入れを任されるようになった私は、
サトルさんのいない日にも、
他のスタッフの女の子たちと一緒に
シフトに入るようになりました。


サトルさんのいない日には、お客さまがいないとき、
彼の前では遠慮して、普段は飲めない、
北欧紅茶のスパイスブレンドを入れて、
余ったお菓子と一緒に、
おいしいねっおいしいねって言いながら、
裏のキッチンで食べるのが、とても楽しみでした。


女の子たちは、おしゃべりで、くすくすよく笑います。
恋の話、友達の話、将来の話。


それから、
鼻で笑うサトルさんの態度に、いかに腹が立ったか、
口が悪いか、いじわるなことを言われたか、なんてこと。


ああ、その言い方はないよねー。
私も同じこと言われたことがあるよ。
おおっ、そんなひどいことまで言えるんだ!なんて
笑い話にしたり、して。


私も、聞いて聞いて!って言ってました。
腹が立った言葉は、今度あの子に会ったら笑って話そう、と
心のメモ帳に、メモするようになりました。


話しながら泣き出しちゃう子には、
でもね、その言葉の裏には、こういう意味があるんだよ。
その態度には、こんな意図があるんだよ。
サトルさんは、こういうことを
言いたかったんじゃないかな?
こうすれば、うまくできるかもよ?
なんて風に、フォローすることもしばしばありました。


でもね。皆、ちゃーんと分かってました。
サトルさんの入れる紅茶は、
文句が言えないくらい、とびきりおいしいってことだけは。


そして、スタッフの女の子たちは皆、
とびきりおいしい紅茶と、焼きたてのお茶菓子が
大好きだったんです。


私が入る前は、連日出勤して
いつもスタッフの女の子たちとぶつかっていた
サトルさんは、すこし気持ちに余裕が出て来たようでした。



さて、次は、焼き立てお菓子のお話。


テイスティングカップ◆2客入◆

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posted by かこ at 00:15 | Comment(0) | 紅茶の話
2012年04月14日

紅茶専門店の気難し屋の店長4

気難し屋の店長3はこちら


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その表参道の紅茶専門店で扱う紅茶は、
スタンダードな茶葉では、

ダージリンファーストフラッシュ、
ダージリンオータムナル、
アッサムフルリーフ、
アッサムBOP、
ディンブラ、
ヌワラエリヤ、
キームン、
ウバ。


香り系では、フレーバードティーにありがちな、
嫌な味が全くない、香りの豊かな北欧紅茶の

セーデルブレンド、
アールグレイスペシャル、
サージョンスペシャル、
スパイスブレンド。


それから、丁寧に入れた、
ロイヤルミルクティー。


それに、需要があるため、仕方なくメニューにある
ブレンドコーヒーと、カフェオレ。


雇われ店長のサトルさんは、
紅茶は、余計な香りの無い、スタンダードな味を楽しむ
クラシックティー派。


オーナー店長は、
北欧紅茶のスパイスブレンドが大好きで。


よく、オーナー店長は、打ち合わせに
一階の紅茶専門店を使っていました。
2、3階のビルの会議室に、ティーポットに入った
紅茶やコーヒーを届けることもありました。


都会の一等地で、いつもお店が空いているのに
高い材料を使って、優雅にお菓子を作っていられる
そんな不思議なお店でいられたのは、
利益をあげる必要のないお店だったから
なんだと思います。


*****


さて、紅茶入れの最初のステップは、
新鮮な空気たっぷりの水道水をやかんに入れて
沸かすこと。


お客さまがいらしたら、勢いよく水を足して
沸かし直します。


まず、紅茶入れ用のガラスのティーポットを
お湯で温めて、捨て、
茶葉をティースプーンで図って入れます。


フルリーフなら、大盛りで。
細かい茶葉は、控えめに。


ぐらぐらに沸いたお湯を、火傷しないように
気を付けながら、勢いよくティーポットに注ぎ
砂時計をひっくり返して3分間。


茶葉がジャンピングしているのを確認して、
泡が出て、茶葉が浮いて沈まなかったり、
すぐ沈んでしまったら、やり直し。


時間を3分、きっちり待って、
茶こしを通しながら、
お客様用の白いティーポットに注いでいきます。


フルリーフなら、ゆったり時間をかけて注ぎ、
最後に、一、二三、と、ゆるやかに大きく振って、
成分をしっかり出します。


細かい茶葉なら、速やかに注ぎ、
最後に、小さく、一、二と振って
苦み成分が出過ぎないように気を付けます。


お湯を注いで、そのままお出しするお店も
たくさんありますが、一番おいしい状態を
店員が作ってお出しする、それが
紅茶専門店ヒラソルのやり方。


*****


お客さまに、紅茶をお出しできるまで、
何回も何回も、サトルさんの指導のもとで、
紅茶入れの練習をしました。


茶葉が小さめのスタンダードなディンブラを
ティースプーンで量って、ティーポットに入れ、
お湯を注いだとたん、はーっと無言でため息をつく
サトルさん。


びくっとしながら、ガラスのティーポットを見ると
茶葉が全部浮いていたり、沈んでしまっていたり。


お湯が沸き足りないと、茶葉が浮いてしまいます。
沸かし過ぎると、空気が抜けて、
ジャンピングが起こらずに、茶葉が沈んでしまいます。


まもなく、お湯の湧くタイミングと
注ぎいれるタイミングは、掴めるようになりました。


ティーポットの中で、茶葉が上手に踊るようになったら
次は、注ぐときが肝心。


お客さま用のティーポットに注ぐスピード、
そして、最後の成分を出し切るリズムがとても大切。


入れた紅茶は、サトルさんに味見をして
いただくんですが、
口にする前から、
これは、ただの色つきお湯ですね、と
はっ、と鼻で笑う、サトルさん。


何度、これは、お湯ですね、とか
苦すぎます、とか、鼻で笑われたことでしょうか。


茶葉のムダです、と言われて、使った茶葉とお湯で
何度も注ぐ練習をしました。


サトルさんに、注いでるところを見せてください、
とお願いし、
何度も見ては、呼吸を合わせます。


大きい茶葉は、ゆったり注ぎ、一、二三。
小さい茶葉は、すーっと注ぎ、小さく、一、二。


おいしい成分は、すべて出し切り、
苦みの成分は、ガラスのティーポットに残します。


サトルさんの入れる紅茶は、いつでもおいしい。
いつでも酔う成分がしっかり出ていて、
香りが豊かに立って、それはそれは、おいしいんです。


私も、一口飲むだけで、微笑んでしまう
おいしい紅茶を入れられるようになりたい。


だから、何度、鼻で笑われても、背中でため息をつかれても
緊張しないように、
大きく呼吸して、何度も何度も紅茶を入れました。


帰りの地下鉄の中でも、あの言い方はないじゃない、と
悔しくて涙ぐみながら
心の中で、


大きい茶葉は、ゆったり注ぎ、一、二三。
小さい茶葉は、すーっと注ぎ、小さく、一、二。と。


サトルさんの紅茶をいれる姿を思い浮かべながら。


*****


ある日、サトルさんに、このタイミングだと
思った紅茶を入れ、味見してください、
とお願いしたところ。


味見の必要は、ありません。と。


思わず、どうして、と緊張する私。


でも、その後、ちゃんと紅茶を口にして、
はい、かこ、おいしいですよ、と笑いました。


それから私は、サトルさんに味見をしてもらうことなく
お客さまに、紅茶をお出しできるようになったんです。


次は、テイスティングの話です。


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2012年04月13日

紅茶専門店の気難し屋の店長3

気難し屋の店長さんとの出会いの話は、こちら


*****

面接では、ダンスカンパニーの制作をしています、という話と、
サトルさんの入れた紅茶に、酔っぱらってしまいました、
という話をしたような気がします。


きっと、お店で紅茶を飲んだ時、面接前から
結果は決まっていたんだと思います。


話は、すぐ終わり、明日から、来られますか、
今日からでも、働けますよ、なんて笑って話をしました。


*****


表参道の紅茶専門店は、オーナーさんの自社ビルの
一階にあり、オーナーの娘さんの趣味のお店でした。


娘さんって言っても、私よりずっと年上の
いわゆる、とてもいい女。
地下一階のダンス教室の、インストラクターでもありました。


その一階の紅茶専門店で、雇われ店長をしていたのが
サトルさんでした。


サトルさんは、お店のすべてを基本的に
任されていて、
店員の採用から、シフトづくり、教育、
仕入れ、製菓、紅茶入れ、お金の管理等、
細かいところに至るまで、担当していました。


それでも、ビルのオーナーの娘さん、
つまりは、オーナー店長の意向には
まったく逆らうことはできない、
という立場にあって、しばしば悔しい思いも、
していたようです。


それは、さておき。


*****


紅茶専門店の一日は、アンデルセンと紀伊国屋へ
食材を買い出しすることから始まります。


サンドイッチ用のパンに、サーモンの燻製、
高級バターや、クロテッドクリーム、牛乳、小麦粉、レモン、
それから、お皿に添えるエディブルフラワー。


買い物をした後は、店内をお掃除して、
中庭のプランターのお花に、
大きなじょうろで、水をやります。


そして、いくつかお花を摘んで、
テーブル上の小さな透明のフラワーベースに飾ります。


その間に、サンドイッチ用のバターを切って柔らかくし、
やかんに、勢いよく水を注いで、
たっぷりお湯を沸かします。


いつでも、すぐ紅茶をいれられるように。


そして、その後、紅茶入れの練習と、
お菓子作りをはじめます。


ティーガーデン・ヒラソルの自慢は、
とびきりおいしい紅茶と、焼きたての手作りのお菓子。


その様子は、また次回


食べてもよし!目でもたのしめる!無農薬栽培高知の食用花(エディブルフラワー) 3P入1箱

クラスト入りの本格派タカナシ「英国伝統のクロテッドクリーム」100g

posted by かこ at 09:58 | Comment(0) | 紅茶の話

紅茶専門店の気難し屋の店長2

予告編はこちら


東京・青山に、ダンス公演のチラシを入れにいった後
ふらふら、表参道のKINOKUNIYA近くの小道を
歩いていると、その紅茶専門店がありました。


名前は、ティーガーデン・ヒラソル。


私は、すっかり疲れていたので、
素敵なたたずまいに魅かれ、お店に入って行きました。


こげ茶色の床に、こげ茶の丸テーブル。
テーブルの上には、小さなお花が飾ってあって。


中庭が見える大きなテラス窓が開いていて
沢山のプランターに、小さな色とりどりの
花が咲いています。


穏やかに明るい光が射しこむ店内は、
静かな音楽が流れ、とても空いていました。


男性の店員さんがやってきたので、
おすすめを尋ねると、香りのいい紅茶なら、
北欧紅茶のセーデルブレンドをどうぞ、と。


白いポットに入れられて、運ばれてきた紅茶。
白カップに優雅に注がれる紅茶を眺めて。


香りとともに、紅茶を一口含んだとき、
自分が笑みを浮かべていることに、気づきました。
一緒に添えられたクッキーもとてもおいしくて。


私は、すっかり紅茶に酔っぱらって
ぽわぽわしてしまいました。


おいしい紅茶ですね。
クッキーも、ここで焼いているんですか?と
尋ねると、僕が焼いたんです、と。


ここで、店員さんは募集してますか?
と、聞いてみました。


ぜひ、面接を受けてください、と
言ったその男性が、雇われ店長のサトルさん(仮名)。


それが、気難し屋の店長さんとの出会いでした。



紅茶専門店の気難し屋の店長3へ続きます。


ノーベル賞の受賞晩餐会で飲まれる絶品紅茶『北欧紅茶100gリフィル セーデルブレンド』自然の花々とフルーツのブレンドが甘く優雅な香り

posted by かこ at 03:22 | Comment(0) | 紅茶の話